武漢コロナウイルスが全世界で猛威を振るって未だ収束していない中、新たなウイルスがまた中国で発生しました。
今度は「腎症候性出血熱」らしいです・・・・。
中国・陝西省の西安で出血熱が発生したとして、地元の衛生当局が注意を呼びかけています。西安では新型コロナウイルスも感染が拡大していて、政府は同時流行に警戒を強めています。
感染の伝播となるのは「ネズミ」です。ハンタウイルスやペストをはじめ、身近な小動物である「ネズミがもたらす感染症」は案外多いので要注意です。
今回その中から代表的なものをご紹介いたします。
ネズミがもたらす感染症:ハンタウイルス肺症候群
ハンタウイルスはネズミ媒介性である のが特徴的です。多くは、新鮮な糞または乾燥した糞、尿中からエアロゾルとしてウイルスを吸い込むことにより感染します。ネズミの咬傷やネズミに触れたも のを介して鼻、目または口を触れることでもおこります。
HFRS を起こすハンタウイルスはユーラシア大陸に広く分布しています。主要なものは朝鮮半島、中国の北部から中部及び極東ロシアにみられるセスジアカネズミ(Apodemus agrarius)を宿主とするハンタンウイルスです。
中国ではおよそ年間数万人、ロシアでは数千人、韓国で数百人の規模での患者がでています。広く世界的にドブネズミ(Rattus norvegicus)に保有されているのはソウル(Seoul)ウイルスであり、日本では1984 年の実験室感染患者の後は出ていません。
我が国の港湾地区のドブネズミは今日においてもウイルスを保有しています。今のところ患者発生の報告は出ていませんが注意する必要があります。
ハンタウイルスはネズミが媒介する感染病で、致死率はなんと40~50%で、早い場合は発症後24時間以内の死亡も頻繁にみられるそうとう怖い病気です。
2020年中国雲南省臨滄市の保健当局は3月27日までに、バスの乗客1人が野生のネズミが媒介するハンタウイルスに感染して23日に死亡したと発表しました。
ハンタウイルスとはいったいどういう病気なのか、感染を防ぐにはどうしたら良いか、解説したいと思います。
ハンタウイルスとは
ハンタウイルスはネズミなどのげっ歯類の一部が持っているウイルスです。分類上はブニヤウイルス科のハンタウイルス属に属します。
流行地域でウイルスを持っているげっ歯類にかまれたり、排泄物に触れたり、排泄物を含んだほこりを吸い込んだりすることによって感染します。腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群という2つの疾患を起こします。
感染の仕方
ウイルスを持ったげっ歯類の糞や尿が粘膜や傷口に直接触れたり、排泄物の含まれたほこりを吸いこんだり、直接げっ歯類に咬まれたりすることで感染します。今現在の時点ではヒトからヒトへの感染例は報告されていません。
潜伏期
10~20日
人におけるハンタウイルスの潜伏期は数日から6週間とされるが、多くは感染から2週間から3週間で発症すると言われています。
症状
潜伏期の後に、突然の発熱、頭痛、悪寒、脱力、めまい、背部痛、腹痛、嘔吐が生じます。また、顔面の発赤、目の充血、発疹などの出血症状がみられることもあります。軽症型では上気道炎症状と微熱、検査でわかる程度の尿異常だけで回復します。一方、重症型は発熱に続いて、低血圧・ショック(4~10日)、尿の減少(8~13日)、尿の増加(20~28日)、回復という強い腎機能障害を伴います。重症型では3~15%が死亡します。
腎症候性出血熱
発熱、腎臓の障害を特徴とする疾患で、主な流行地域は極東アジア(中国、数万例/年)と北欧・東欧(数千例/年)を主とするユーラシア大陸全域です。わが国では1960~70年代に発生の報告がありますが、その後はみられていません。
韓国出血熱は1930年代、満州において関東軍に恐れられ、朝鮮戦争の際には米軍内において3,000人以上の患者が発生。
わが国では梅田奇病として、1960年頃から約10年間にわたって大阪梅田地区で流行し、発生した119人の患者のうち2人が死亡したことがあります。
中国では流行性出血熱、ソ連では出血性腎症腎炎の発生があります。
ハンタウイルス肺症候群(ハンタウイルス感染症 腎症候性出血熱)
急性の肺水腫・呼吸器症状を主徴とした疾患。致死率はおよそ50%にのぼります。
1993年にアメリカで2000名以上のHPS患者が報告されており、また多くのHPS関連ハンタウイルスが見つかっています。
感染源
北米ではシカマウス、南米ではコトンラットやコメネズミなどのげっ歯類から感染します。いずれのげっ歯類も日本には生息していません。ウイルスを持ったげっ歯類の糞尿が混ざったほこりを吸い込むことで感染します。北米のハンタウイルス肺症候群では、ヒトからヒトへの感染は起こらないと考えられています。
ただ、新世界ハンタウイルスの種によって病原性が異なり、基本的にはヒトからヒトへの感染は無く、ウイルスを保有した齧歯類からの感染ですが、南米のAndes virusのある株はヒト-ヒト感染を起こし問題となりました。
流行地
ハンタウイルスによって引き起こされる腎症候性出血熱は、原因不明の風土病として20世紀初頭から認識されていました。本疾病はユーラシア大陸において広く見られ、韓国では韓国出血熱、中国では流行性出血熱、旧ソ連では出血性腎症腎炎、スカンジナビア諸国では流行性腎症と各流行地においてさまざまな病名で呼ばれていた。
永らく病原因子は不明でしたが、1976年に韓国でセスジネズミより韓国出血熱の病因ウイルスを分離することに成功。このウイルスはセスジネズミの捕獲場所を流れる川、漢灘江(ハンタンガン、京畿道漣川郡)の名前をとってハンターンウイルスと名づけらました。
以後、各流行地などにおいても病因ウイルスが分離されました。
1993年には、アメリカ合衆国南西部において急性で重篤な呼吸器疾患が多数報告されました。これらの病因ウイルスはハンタウイルス属によるものであることが判明したため、これらの疾病はハンタウイルス肺症候群と名づけられました。
世界各地にて、げっ歯目だけでなくトガリネズミ目やコウモリ目などの小型哺乳動物からも、さまざまなハンタウイルスが発見されています。
ハンタウイルスの予防
国内各地の港湾部において、ハンタウイルスキャリアとなったドブネズミの存在が確認されています。
ネズミが家や職場に営巣しないように衛生環境を改善し、感染ネズミからの分泌物や唾液がエアロゾル化しないように行動することが大切です。
家や物置などの構造物の中に、食物を置かない、営巣可能な所をなくす、ネズミが出入りできる穴をふさぐ、ネズミ取りや殺鼠剤を用いたネズミの捕獲などの対策が感染予防に有効です。
ハンタウイルスは、希釈された漂白剤、洗剤、一般的な消毒液に感受性し、これらで消毒可能です。
ネズミが営巣している可能性のある建物の中の汚染されている場所・物品は10%に希釈した漂白剤やその他の消毒液で消毒します。
注意:ホウキや掃除機を使ってネズミの営巣場所を掃除しないこと!
ウイルスを持ったげっ歯類の糞や尿が粘膜や傷口に直接触れたり、排泄物の含まれたほこりを吸いこんだり、直接げっ歯類に咬まれたりすることで感染します。
ネズミ駆除が一番の防御策となります。
完全にかつ迅速にネズミ駆除をするのであれば、プロのネズミ駆除業者をおすすめいたします。
そして、ネズミの糞尿が放置は衛星的に問題があります。
今はネズミがいなくても、かつてネズミがいたのであれば、建物内の掃除と消毒をした方がベストです。
素人では困難な天井裏や床下などの掃除と消毒も、ネズミ駆除業者にお願いできますので、相談されると良いでしょう。
ネズミがもたらす感染症:ペスト
ペスト菌による細菌感染症です。
本来、ネズミなどのげっ歯類の感染症でノミやエアロゾルを介してヒトに感染します。
症状や感染経路により「腺ペスト」、「敗血症型ペスト」および「肺ペスト」に分けられます。いずれも強い全身症状を示し、敗血症や肺炎で死にいたることもあります。
日本には 1899 年にはじめて海外から輸入され流行もみられましたが、ネズミ駆除などの防御対策が功を奏し、1926 年以降ペスト患者の報告はありません。
とはいえ、世界には野生のげっ歯類にペストが持続的に感染している地域があり、開発にともないヒトへの感染機会が増加しています。
ペストにはストレプトマイシンなどの抗菌薬がよく効き、早期に治療すれば回復可能です。また、ワクチンがあるので感染リスクのあるヒトは接種を受けることが勧められています。
ネズミがもたらす感染症:腎症候性出血熱
腎症候性出血熱はハンタウイルスによっておこる病気です。
この病気は風土病的なものでアジア・ユーラシア大陸に広く分布し、その地域に生息するげっ歯類、主に野生ネズミがウイルスを保有しています。
感染しているネズミに症状はありませんが、尿などからウイルスを放出します。ネズミに咬まれたり、尿がヒトの傷口につくなどを原因としてハンタウイルスがヒトに侵入し、感染が成立します。ヒトからヒトへの感染はありません。
日本では、1960 から 70 年代に大阪梅田地区で「梅田奇病」といわれた地域的な流行がありました。また、港湾地区のドブネズミは高率に感染していることが知られており注意が必要です。
軽症例はかぜに似た症状で、蛋白尿や血尿がみられる程度ですが、重症例では血圧の低下、出血、腎不全などにより死亡することもあります。
ネズミがもたらす感染症:レプトスピラ症(ワイル病)
ワイル病、秋やみなどに代表されるレプトスピラ症(leptospirosis)は、病原性レプトスピラ感染に起因する人獣共通の細菌(スピロ ヘータ)感染症です。
病原性レプトスピラは保菌動物(ドブネズミなど)の腎臓に保菌され、尿中に排出されます。ヒトは、保菌動物の尿で汚染された水や土壌 から経皮的あるいは経口的に感染します。
東南アジアでは、レプトスピラ症の流行は多雨期から収穫期(7~10月頃)に集中することが疫学的に確認されています。レプトスピラ症の流行地域では不用意に水に入らないこと、特に洪水のあとには絶対に入らないことが予防には重要です。
ネズミがもたらす感染症:E型肝炎
E型肝炎は、患者の便の中に出てきたE型肝炎ウイルスが、人の口の中に入って主に感染します。飲み水が便によって汚染されているような場合に集団感染が起こりやすいようです。
2018年、中国・香港の男性1人が、ラット由来のE型肝炎ウイルスに感染していることが世界で初めて確認された。香港大学(University of Hong Kong)が28日、明らかにしました。
E型肝炎は、これによりラットE型肝炎ウイルスがヒトに感染し、症状を呈するに至るということがわかりました。
ラットE型肝炎ウイルスが検出されたのは、肝臓移植の後、肝機能検査で繰り返し異常が認められた56歳の男性。
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)は、男性はネズミのふんに接触した食べ物を摂取したことで、ウイルスに感染した恐れがあると報じています。
同紙によると、男性は団地に住んでおり、自宅の外にネズミの大発生を示す形跡が複数見られたとしています。
人間以外でもサル、ブタ、ネズミ、ニワトリ等がE型肝炎ウイルスに感染することがあることが知られています。
ネズミがもたらす感染症:サルモネラ症
サルモネラ症は、ネズミの糞尿に含まれるサルモネラ菌が引き起こします。人の手や食べ物、調理器具などを介して、口の中に入ることで感染する病気。
ネズミが食べ物、調理器具や食器などを汚染する可能性がないよう、密閉できる容器に入れるなどの管理をきちんと行いましょう。
症状は、腹痛や嘔吐、下痢などの急性胃腸炎や食中毒になります。最悪の場合は死に至ることもあるので、体力のない人や高齢者や乳幼児は特に注意が必要です。
ネズミがもたらす感染症:腸チフス
腸チフス(ちょうチフス)は、サルモネラの一種であるチフス菌 (Salmonella enterica var enterica serovar Typhi) によって引き起こされる感染症の一種。
感染源は汚染された飲み水や食物など。潜伏期間は7〜14日間ほどです。
衛生環境の悪い地域や発展途上国で発生して流行を起こす伝染病であり、南アジアを中心にアフリカ、東アジア、東南アジア、中南米、東欧、西欧などで世界各地で発生が見られます。
主に経口感染で、無症状病原体保有者や腸チフス発症者の大便や尿に汚染された食物、水などを通して感染します。
これらは手洗いの不十分な状態での食事や、糞便にたかったハエが人の食べ物で摂食活動を行ったときに、病原体が食物に付着して摂取されることが原因です。
ほかにも接触感染や性行為、下着で感染する。胆嚢保菌者の人から感染する場合が多いようです。ネズミの糞から感染することもあります。
ネズミがもたらす感染症:鼠咬症
原因となる菌には鼠咬症スピリルムとストレプトバチルスの2種類あります。菌を保菌しているネズミにかまれたとき、その傷口から感染します。
ネズミ咬傷の最大10%で鼠咬症の感染が発生します。鼠咬症は,ネズミ咬傷が原因である場合が最も多いのですが、全ての齧歯類または齧歯類を捕食する肉食動物の咬傷によっても起こりうるとされています。
予防対策としてはネズミの駆除が重要である。特にペットとしての飼育はできるだけ避けた方が良いでしょう。生乳および汚染の可能性のある水の喫飲をしない。
ネズミがもたらす感染症 まとめ
いかがでしょうか。
これらはほんの一部です。
野生の動物がもたらす感染症は、新型コロナウイルスやエボラ出血熱のように、突然未知の感染症に遭遇することも考えられます。
私達の身近な野生動物である「ネズミ」。
どうかネズミを軽視しないよう、ネズミを近づけない、見つけたら駆除するようお願いいたします。