ネズミは集団で行動する動物です。
集団で暮らす動物は、お互いの意思を伝えるために何等かの言葉を持っていることが多く、ネズミのような知能の高い哺乳類なら高度な会話をしていることが想像されます。
今回はネズミ同士はコミュニケーション手段として、どのような手段で会話をしているのかということをお話してみたいと思います。
ネズミのカーミングシグナル
クマネズミだと1グループは、オスのボス1匹とそれを取り巻くメス数匹、そして子供達のグループで、繁殖が進むとネズミ算式に数を増やしてしまいます。
ネズミは1匹で行動することはあまりなく、最低でも番(つがい)で行動しているようです。
単独行動ではない動物は、コミュニケーションをとります。
お互いのコミュニケーションをとるために、動物はボディランゲージで表現します。それを「カーミングシグナル」と言います。
ストレスや不安を感じたとき、自分を落ち着かせようとするときなどにカーミングシグナルを出します。
不安、恐怖心、不快な刺激や他者の威嚇などを和らげる時にも使い、他の犬や人間と友好的に接するための手段でもあります。
スナネズミの足踏み(スタンピング)
昔、スナネズミを飼っていたことがあるのですが、「タタン、タタン、タタン」と足踏み「スタンピング」することがあります。
スナネズミがスタンピングをするのは、怒ったり驚いたりした時や、何か伝えたいときにするそうなので、これこそカーミングシグナルです。
野生のスナネズミは危険を察知すると こうして地中の仲間に知らせるそうです。
昔、佐々木典子著「動物のお医者さん」という漫画でスナネズミが登場したのですが、そこでは「地団太を踏む」と表現されていました。
このカーミングシグナルは、特に危険じゃないと思うんだけどな~というときでもやっていたので、法則がわかりませんでした。
私たち人間の耳には聞こえない音を聞いていたのかもしれません。
ネズミは鳴き声でコミュニケーション
どうもネズミはカーミングシグナルよりも、私たち人間と同じように言葉、つまり鳴き声でコミュニケーションをとっていることがわかりました。
ネズミの声は人間の耳には聞こえない超音波なので、ネズミの会話を聞くことができません。
そこでネズミの会話をもとの5%のスピードになるまで落として初めて人間の耳が付いていけるレベルになります。
スロー再生したカリフォルニアシロアシマウスの鳴き声は、クークーという優しい声からぎょっとするような吠え声まで幅広い鳴き声も持ちます。
米ウィスコンシン大学マディソン校の研究者ジョシュ・パルトラック氏らの研究チームが、その会話を読み解くことで、このネズミの社会生活や繁殖について調べました。
パルトラック氏は、ネズミの「親しみの鳴き声」「イチャイチャしているときの鳴き声」「怒りの鳴き声」などいくつかの鳴き声を紹介しました。
ここに音を貼れないのが残念ですが、
「親しみの鳴き声」は鳥のさえずりのようなかわいらしい声。
「イチャイチャしているときの鳴き声」は長い汽笛のような声。
「怒りの鳴き声」は猛獣が吠えるときのような激怒の声に似ています。
アンデスの歌うネズミ「デグー」
「デグー」というアンデス地方原産のネズミがいます。
デグーは様々な鳴き声を使い分けて感情表現をします。その可愛らしい鳴き声は「アンデスの歌うネズミ」と称されるほどです。
嬉しい時は小鳥のようにピルル、ピピピピと鳴き、
怒った時はプゥー!ジュジュジュッ!と力強く鳴き、
かまって欲しい時はピューイと指笛のような声を出すそうです。
求愛の鳴き声は小鳥のさえずりのようなのだとか。
デグーはお互いのコミュニケーション手段として鳴き声を上手に使っているようです。
テグーの他、歌って会話するネズミとして「Alston’s singing mouse」が知られています。
このネズミは、速いスピードで複雑な会話を行っているようです。
ニューヨーク大学メディカルセンターの研究者がその脳の働きを調査しました。
その研究によると、オスは敵を攻撃する時やメスを魅了する時に歌を歌っていると言います。
ネズミの「会話」をAIが解析
ネズミのコミュニケーションを、AIを利用して理解しようという研究をワシントン大学の研究者らが進めています。
研究者らが採ったのは、USVをソノグラム(音声分析図)というビジュアルなものに変換し、それを深層学習を用いて解析するという方法です。
ネズミの発声例を学習した生物模倣的アルゴリズムを用いて、ソノグラムから特定の意図や内容を持つ部分を抽出するというものです。
その結果、ネズミの超音波発声には20パターンほどの発声があることがわかりました。
ネズミの鳴き声の分析はまだ研究途中の様ですが、将来的には感情をビジュアル化して、人間を理解分析する研究に発展するかもしれません。
ネズミは会話をしているのか まとめ
ネズミの会話は、危険を仲間につたえることの役割、そしてもう一つは繁殖に関わっていると考えられています。
生物は次の世代に子孫を残すことが重要ですので、それに鳴き声が関わっていることは当然といえば当然かもしれません。
ネズミ同士の「会話」が争いの鳴き声をカップルと、争いの会話がされていなかったカップルを比較すると、争いがないカップルの方が繁殖率が高かったという研究もあります。
なんだか人間のようで面白いですね。
ネズミは考えているよりも、いろいろな会話をしながら暮らしているのかもしれません。