ネズミが出てくる童話

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ネズミが出てくる童話ネズミの童話

悪者にされてしまいがちなネズミですが、人間とネズミとの付き合いが始まったのは、人類が狩猟型生活から、定住型の生活になり農耕を始めた頃からです。

日本では高床式倉庫に見られる「ネズミ返し」が物語っているように、ネズミは人間に依存し人々との付き合いも長い身近な動物です。

身近であれば地域それぞれのお話もあるわけで、各地の民話やおとぎ話としてネズミはちょこちょこ登場してきます。

欧米ではペストの大流行があったことから、ネズミは悪者に見られてねずみ嫌いが浸透していてマイナスイメージの傾向があるようです。

一方、日本はネズミのイメージは悪いものではなく、知恵があり人助けや恩返しをしたりもするプラスのイメージと捕えられています。
実はこれは日本のネズミ駆除を困難にしている一つの要因にもなっているようです。

可愛い顔をした知恵のある小さな動物を駆除することができなくて、そのまま放置して状況を悪化させたりせっかく捕まえたのに逃がしたり、こっそり飼ってしまう人までいるのだとか。

そんな日本のネズミの物語として有名なのは『ネズミの嫁入り』、『おむすびころりん』、『ねずみの相撲』などがあります。

海外ではドイツの『ハーメルンの笛吹き男』、イソップ童話の『ライオンとネズミ』『田舎のネズミと町のネズミ』などが有名です。

日本のネズミの童話『ネズミの嫁入り』

日本のネズミの童話『ネズミの嫁入り』

昔々、ネズミの一家がいました。
父さんネズミと、母さんネズミと、一人娘です。
「ねえ、お父さん。そろそろ娘にも、お婿さんを見つけなくてはなりませんね」
「そうだな、日本一の娘だから、日本一のお婿さんを見つけてやらないとな。ところで日本一強いのは、やっぱりお日様だろうな」
父さんネズミと母さんネズミは、お日様のところへ行って頼んでみました。
「日本一強いお日様。娘をお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃ嬉しいが、雲はわしより強いぞ。わしを隠してしまうからな」
そこで父さんネズミと母さんネズミは、雲のところへ行ってみました。
「日本一強い雲さん。娘をお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃ嬉しいが、風はわしより強いぞ。わしを簡単に吹き飛ばしてしまうからな」
そこで父さんネズミと母さんネズミは、風のところへ行ってみました。
「日本一強い風さん、娘をお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃ嬉しいが、壁はわしより強いぞ。わしがいくら吹いても、わしをはね返してしまうんじゃ」
そこで父さんネズミと母さんネズミは、壁のところへ行ってみました。
「日本一強い壁さん。娘をお嫁にもらってくれませんか?」
「そりゃうれしいが、わしよりも強いものがいるぞ。それはネズミじゃ。ネズミに齧られたら、わしもお終いだからな」
「何と! 日本で一番強いのは、わしらネズミだったのか」
そこで娘は、めでたくネズミのお嫁さんになりました。

日本のネズミの童話『おむすびころりん』

日本のネズミの童話『おむすびころりん』

むかしむかし、木こりのおじいさんは、お昼になったので、切りかぶに腰をかけて、お弁当を食ベることにしました。
「うちのおばあさんが握ってくれたおむすびは、まったく美味しいからな」
ひとりごとをいいながら、竹の皮の包みを広げたときです。
コロリンと、おむすびが一つ地面に落ちて、コロコロと、そばの穴ヘ転がり込んでしまいました。
「おやおや、もったいないことをした」
おじいさんが穴をのぞいてみますと、深い穴の中から、こんな歌が聞こえてきました。
♪おむすびコロリンすっとんとん。
♪コロリンころげて 穴の中。
「不思議だなあ。だれが歌っているんだろう?」
こんな奇麗な歌声は、今まで聞いたことがありません。
「どれ、もう一つ」
おじいさんは、おむすびをもう一つ、穴の中へ落としてみました。
するとすぐに、歌が返ってきました。
♪おむすびコロリンすっとんとん もひとつ転げてすっとんとん。
♪コロリンころげて 穴の中。
「これは、おもしろい」
おじいさんは、すっかり嬉しくなって、自分は一つも食ベずに、おむすびをぜんぶ穴へ入れてしまいました。
つぎの日、おじいさんは、昨日よりももっとたくさんのおむすびをつくってもらって、山へ登っていきました。
お昼になるのを待って、コロリン、コロリンと、おむすびを穴へ入れてやりました。
そのたびに、穴の中からは、きのうと同じ可愛い歌が聞こえました。
「やれやれ、おむすびがお終いになってしまった。だけど、もっと聞きたいなあ。・・・そうだ、穴の中へ入って、たのんでみることにしよう」
おじいさんは、おむすびのようにコロコロころがりながら、穴の中へ入っていきました。
するとそこには、数えきれないほどの、大勢のネズミたちがいたのです。
「ようこそ、おじいさん。おいしいおむすびをたくさん、ご馳走さま」
ネズミたちは、小さな頭をさげて、おじいさんにお礼をいいました。
「さあ、今度はわたしたちが、お礼にお餅をついて馳走しますよ」
ネズミたちは、臼と杵を持ち出してきて、
♪ペッタン ネズミの お餅つき。
♪ペッタン ペッタン 穴の中。
と、歌いながら、餅つきを始めました。
「これはおいしいお餅だ。歌もお餅も、天下一品」
おじいさんはご馳走になったうえに、ほしい物をなんでも出してくれるという、打ち出の小槌をおみやげにもらって帰りました。
「おばあさんや、おまえ、なにが欲しい?」
と、おじいさんは聞きました。
「そうですねえ。いろいろと欲しい物はありますけれど、可愛い赤ちゃんがもらえたら、どんなにいいでしょうねえ」
と、おばあさんは答えました。
「よし、やってみよう」
おじいさんが、小槌を一振りしただけで、おばあさんの膝の上には、もう赤ちゃんがのっていました。
もちろん、ちゃんとした人間の赤ちゃんです。
おじいさんとおばあさんは赤ちゃんを育てながら、仲よく楽しく暮らしましたとさ。

ドイツのネズミの童話『ハーメルンの笛吹き男』

ドイツのネズミの童話『ハーメルンの笛吹き男』

昔々、ハーメルンという町に、どこからか数えきれないほどのネズミがやってきて、町のあちこちに住みついてしまいました。
困った町の人たちはネズミ捕りをしかけたり、毒餌をばら撒いたりしましたが、ネズミはますます増えるばかりです。
猫もネズミが多すぎてネズミをつかまえるどころか、ネズミたちに追いかけられる始末です。
そんなある日、一人の男が町へやって来て、こんなことをいいました。
「ネズミは、この私が退治してさしあげましょう。ただしその代金として、金貨千枚を頂戴します」
「おお、願ってもない。千枚どころか、二千枚でもお払いします」
男は外へ出ると、手にしていた笛を吹き鳴らし始めました。
すると、あちこちの家からネズミたちが飛び出して、笛ふきの回りへ集まってきたではありませんか。
ネズミたちを従えた笛吹きは、笛をふきならしながら川の中へサブサブと入っていきました。
ネズミたちも後を追って川へ飛びこむと、そのまま一匹残らず溺れ死んでしまいました。
「やった! やった!」 町の人たちは大喜び。
「ごらんのように、ネズミは残らず退治して差し上げました。それでは、金貨千枚を頂くとしましょうか」
「金貨千枚だって?」
町の人たちは、渋い顔をしました。
「たかがネズミくらいのことで、金貨千枚とは高すぎるではないか。まあ、十枚くらいは出してやるが」
「さては、約束を破るるつもりですか。よろしい。それならこちらにも考えがある」
笛ふきは顔色を変えると、姿を消してしまいました。
「・・・やれやれ。あきらめたか」
そのときどこかで、笛の音が響き始めました。
笛ふきが、町の広場のまん中で笛を吹き始めたのです。
それといっしょに、あちらこちらの家から子供達が集まってきました。
子供たちが笛ふきのあとを付いていきます。笛ふきは笛をふきならしながら、山の麓にあるほら穴の奥へはいっていきました。
子供たちも大喜びで、洞穴の中へはいっていきました。
「おーい、待ってくれ、待ってくれ」
「わしらが悪かった。約束どおり金貨をはらうから、子供たちを返してくれ」
町の人たちは、声を限りに呼びかけました。
でももう遅く、岩が一人でに動き始めたかと思うと、ほら穴の入り口をピッタリと塞いでしまいました。
こうしてハメルンは、子どもの一人もいない町となってしまったのです。