離島にもたらすネズミの恐ろしい影響

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離島にもたらすネズミの恐ろしい影響ネズミと生態系

ネズミの被害は何も住宅や店舗だけではありません。

小さな体のネズミですが、その島の生態系を崩し、後々まで影響を及ぼすおそるべき存在となり得ます。

イエネズミは大洋に浮かぶ島の90%に侵入していて、世界的に鳥と爬虫類の絶滅の40~60%はネズミのためとされています。

外界を海で隔てた島は外来種に特に脆弱なことも多く、陸地とつながったことがないため種の数が少ない傾向にあります。また資源が豊富でないため食物連鎖も単純で、そもそも哺乳類である天敵に対する防御手段を持たない動物も多いのです。

外来種の侵入が、鳥を含め土着の野生動物に与える打撃は深刻です。
今回はそんな離島に影響を及ぼしたネズミのお話をご紹介したいと思います。

イエネズミが上陸した「ラット島」

ラット島

アラスカからベーリング海へと長く伸びるアリューシャン列島一帯は海鳥などが多く生物多様性が豊かで、自然保護区域に指定されています。

そんなアリューシャン列島の中ほど、ラット諸島の中に「ラット島」があります。

ラット島、つまりネズミ島です。

ラット諸島の名前は1827年にフョードル・リトケによって付けられた名前(露:Крысьи острова)を英語に翻訳したもので、ネズミが多く繁殖していたことにちなんでいます。(現在の正式名称は「ハワダックス島」)

ラット島にイエネズミをもたらしたのは悲しいかな、我が国日本です。1780年ごろ、日本の船舶が座礁して上陸したイエネズミだったと言われています。

日本からの海流の流れはアリューシャン列島に続いているようで、「おろしあ国酔夢譚」で知られる大黒屋光太夫ら※が日本から漂流船で行き着いたのもここ、ラット諸島の中のアムチトカ島です。アムチトカ島はラット島のすぐ隣の島です。

ちなみに大黒屋光太夫らの漂流船がアムチトカ島に上陸したのが1983年。
と、いうことは、その座礁船はもしかして大黒屋光太夫らが乗ってきた船だった可能性はどうでしょうか?(はっきりとした記述は見つからず断定しません)

ともかく、ネズミが侵入してしまったことにより、最上位の捕食者だった鳥にとって代わったことで、生態系は根本的に変わってしまいました。

ワシカモメやミヤコドリなどの海鳥は、潮間帯の岩場で巻き貝やウノアシガイなどの無脊椎動物を主に捕食していましたが、鳥がいなくなると無脊椎動物が潮間帯を覆って海藻類を食べ尽くし、この島の生態系の基盤を成していた海藻の森が衰退してしまいました。

その後、アリューシャン列島が自然保護区域に指定され、ネズミと毛皮業者が持ち込んだ北極ギツネの駆除策作戦が決行されました。
アラスカ魚類野生生物局などは2008年に、9日間にわたって汝矣島(ヨイド)の面積の3倍の2900ヘクタールのラット島全域に、ヘリコプターでネズミ駆除剤の入った餌51トンを散布しました。

島から外来種を駆除する史上最大規模の作戦は成功しました。保護種のハクトウワシ43羽を含む422羽の鳥が駆除剤中毒で死ぬなどの副作用も生じましたが、ネズミも姿を消しました。

北極ギツネは1984年にラット島から駆除され、続いて大規模なネズミ駆除作業の末、2010年には侵入230年目にして「ネズミのいない島」が公式に宣言されたのです。

ネズミを駆除したことで鳥が帰ってくると、海藻類を食べる無脊椎動物が減り、海藻の森が再び繁茂するようになり、2012年にハワダックス島に改名されました。

大黒屋光太夫
天明2年(1782年)、嵐のため江戸へ向かう回船が漂流し、アリューシャン列島(当時はロシア領アラスカの一部)のアムチトカ島に漂着。ロシア帝国の帝都サンクトペテルブルクで女帝エカチェリーナ2世に面会して帰国を願い出、漂流から約9年半後の寛政4年(1792年)に根室港入りして帰国した。

ウィキペディア「大黒屋光太夫」より

ネズミの被害はサンゴや魚群の生育にも影響

ネズミの被害を受けている島はラット島だけではありません。
ネズミがサンゴ礁に与える影響も懸念されています。

インド洋にあるチャゴス諸島というところがあります。
チャゴス諸島は無人島の集まりなのですが、一部に船や難破船に乗っていたネズミが住み着くようになってしまいました。
ネズミがいない島もあり、その違いが比較されています。

ネズミがいない島はたくさん鳥がいて、とても騒がしいのです。
空は鳥で埋め尽くされ、すごくニオイが強いのです。鳥が島に落とすふんに強烈なにおいがあるからです。

一方ネズミのいる島に行くと、海鳥がほぼいません。
これが何を意味しているか見ていきましょう。

鳥の糞には養分があります。
サンゴ礁は海鳥のふんから養分を得るという健全な生態系があります。

ネズミがいることでサンゴ礁は大きな脅威に直面することになります。

海鳥がネズミに殺されることで、サンゴ礁が海鳥のふんから養分を得るという健全な生態系が乱されると、サンゴ礁に影響が出ます。

そしてサンゴ礁に住み着く魚も減ります。
魚群量にも大きな差ができ、ネズミのいない島の周辺にある岩礁の魚群量は、ネズミに侵略された島付近の岩礁の魚群量と比べて、50パーセント多かったそうです。

ネズミの侵略は海鳥やサンゴ礁だけではありません。
例えば、ハワイ近くのパルミラ環礁では、陸生植物にも被害を及ぼしています。
ネズミたちは発芽しようとしている若木を襲い、種子を食べてしまうのです。

小さいけれど被害は大きいネズミによる影響

ネズミは小さく、たかだかネズミ1匹と思われがちですが、そのネズミが妊娠したら?どうでしょう。

侵入した地で爆発的に数を増やし、自然に与える影響を考えるとぞっとします。

他国のものとして考えず、私達の身近なことでも同じです。
捕えたネズミは人里離れた野山に放すということのないようにしたいものですね。
一度壊れてしまった生態系を元通りにするのには、大変な苦労と時間が必要ですので。

 

出典:ラット諸島 – Rat Islands – Wikipedia