北京で肺ペストが発生したという報道がありました。
このブログはネズミ関連のブログであり、ペストの感染にはクマネズミが関わっているため、この話題を取り上げることにします。
2019/11/14現在の時点では患者は内モンゴル自治区出身の2名。
現在、北京市内の病院で治療を受けているとのことです。
世界保健機関(WHO)は、「当局からの連絡を受け、適切な措置が講じられたことを確認した」と発表しました。
中国の報告は肺ペスト
ペストは最初にペスト菌が体内で感染を広げる部位によって、リンパ節(腺)に広がる「腺ペスト」、血液中に広がる「敗血症ペスト」、肺に広がる「肺ペスト」の三つに分類されます。
今回、中国の報告がありましたが、怖いのはペストの中でも感染力および致死率の高い「肺ペスト」であることです。
ペストの中で最も珍しいのが今回発見された肺ペストになります。
肺ペストは、ペスト菌が肺を侵すことによっておこります。
ペスト菌を含んだ気道の分泌物を介して、肺ペストはヒトからヒトへの感染を起こします。肺ペスト患者の呼吸器からの飛沫を吸い込むようなことで、患者と身近に接触するヒトがペストに感染することになります。
肺ペストの症状
肺ペストは二次的に発症する事が多く、症状は菌の暴露後1~6日後から起こり、強烈な頭痛と高熱・呼吸困難・胸痛・咳嗽や喀痰などが生じ、呼吸器困難をきたす重症急性進行性肺炎となります。
発症から24時間以内に重篤な状態に至り、適切な処置を講じなかった場合の致死率は90%以上で、腺ペストよりも深刻だといわれています。また、肺ペストは感染者の咳や嘔吐による飛沫感染で拡大するため、伝染性も極めて高めです。
原発性肺ペストの予後は悪く、少なくとも発症後18時間以内に化学療法を始めることが大切で、二次的に肺炎や髄膜炎への移行を防ぐことが予後を左右します。
ペストの感染経路
ペスト菌(Yersinia pestis)を原因とし、菌を保有するネズミなどげっ歯類からノミを介して感染します。また、感染したヒトや動物の排泄物から傷口や粘膜を介して感染することや、飛沫によって感染することもあります。
なお、ネズミからだけではなく、恐ろしいことに肺ペストは人から人に移ります。
日本と北京との人の行き来を考えると、楽観視はできません。
中国CDCは「感染拡大の可能性は極めて低い」と発言していますが、脱線した列車を埋めてしまう国のことですので、どこまで信用できるか正直わかりません。
できれば発生地に足を運ばないことに越したことはありませんが、やむを得ない場合、激しい咳をしている人には近寄らないようにして下さい。接触してしまった場合には直ちに医療機関に連絡し、指示を受けてください。
案の定、患者は2人ではないみたいです・・・↓
ペストの流行はたびたびあった
ペストというと中世の黒死病のイメージが強く、昔大流行した感染症と思いがちですが、実は近年でも発展途上国ではなお大小の流行があります。1994年に発生、パニックが起きたり、アメリカでもプレイリードッグからの感染があります。
2000年以降も世界中で症例が報告されており、特にマダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルー、アメリカ合衆国では毎年発生報告があります。
ちなみに中国におけるペストは2014年にも確認されています。このケースでは、感染者が見つかった玉門市が封鎖されて151名が隔離状態に置かれ、死者は1名でした。
2017年にはマダガスカルの首都アンタナナリボを含めた都市部で肺ペスト患者のアウトブレイクがあり、2300人以上の感染者と200名を超える死者が出ました(致死率8.6%)。
ペストの治療法
抗菌薬が奏功するため早期治療が重要です。
感染スピードの速い肺ペストは時間との闘いとなります。
感染した患者は感染症指定医療機関に隔離され、株ごとに異なる感受性のある抗生物質による治療が行われる(テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、ドキシサイクリン、シプロフロキサシン等)。
また、ペストの患者に接触した人には予防のために抗生物質を投与します。
ペストの予防
ペストにはワクチンは存在しません。
感染の予防策としてはペスト菌を保有するノミやネズミの駆除。腺ペスト患者の体液に触れないことが最も重要です。また、患者、疑似患者、無症状病原体保有者の第1種感染症指定医療機関などの入院をすすめることや、患者やげっ歯類に直接接触した人への抗菌薬の予防投与も有効です。
特にネズミ被害が一番多くやっかいなクマネズミはこのペストの中間宿主になりますので注意が必要です。
ノミの宿主としてのネズミの駆除をしましょう。
家にネズミがやってくるのは冬です。
ネズミは寒さを避けるために温かい家の天井裏などに住み着きます。
ネズミを家に入れないために万全をつくしてください!